福田恵里

1990年滋賀県生まれ。大阪大学入学後、大学3年生から2年間休学しサンフランシスコ、韓国に留学。プログラミングに興味を持ち、帰国後は関西でWebデザインスクールに通い、制作会社で実務経験を積む。その後初心者の女性向けのWebデザイン講座を立ち上げ、300名以上の女性にWebデザインを教える。新卒で株式会社リクルートに就職し、2年後に同社を卒業。「SHE株式会社」を立ち上げる。

SHEはこういう場所にしたい

——はじめに、SHEを立ち上げたきっかけを教えていただけますか?

福田:大学生の頃にIT業界の女性人材の不足に課題感を持ったことから、初心者の女性向けのWebデザイン講座を立ち上げ、それをリクルートで働きながらずっと副業として続けていました。ずっとやっているうちに、「私、この講座をきっかけにデザイナーに転職しました!」とか「エンジニアになりました!」という声をどんどんいただくようになって。

それが個人的にはすごく嬉しくて。小さな変化ではあるんですが、自分が考えて作ったもので誰かの人生をより良い方向に変えられたというその時の経験は私の大事な原体験となりました。

そして、この経験をWebデザインやプログラミングという閉じた分野だけじゃなく他の色んな分野に展開し、女性のキャリア全般を応援していきたいと思いSHEを立ち上げました。

——特にこの方というSHEならではの講師はいらっしゃいますか?

福田:SHEで登壇をお願いしている講師の方々は、“自分にしかない価値”を発揮して輝いている方や、会社に依存せず個人名で生きている方を重視してお呼びしています。過去にはゆうこすさんや、さえりさん、しおたんさん、椎木里佳さんなど、SNSを中心に活躍されている方も多く登壇していただきました。

ただ、SNSでフォロワーが多い=個人名で活躍しているという訳でもないと思っていて。我々が目指しているのは球体型のコミュニティなんです。今までのオンラインサロンとかコミュニティって、カリスマ的なリーダーが1人いて、みんながその人にフォローしていくというピラミッド型コミュニティの作り方が主だったんです。

私たちが作りたいのは、上下関係のない、お互いがお互いの好きなことをリスペクトしてギブし合えるようなコミュニティ。フォロワーが多くたって少なくたって、自分の大切にしている「好きなこと」「得意なこと」があって、それをある時は講師の立場で教え、ある時は生徒の立場で学ぶ、そんな学び合いのコミュニティが理想です。

毎回レッスンの最後にアンケートをとっているんですけど、1番多い声が「講師の方との距離が近い」ということ。このロールモデルとの距離の近さを今後も大切にしていきたいです。

——これからもっとこういう人を呼んでみたいっていうのはありますか?

福田:たくさんいるんですけど、年齢制限を設けずに幅広い世代の方をお呼びしたいです。例えばおばあちゃんが我々のような若い世代の女の子に対して魚のキレイな捌き方を教えてくれるとか、皆さんみたいな女子大生の方がおばあちゃんに対してスマホの使い方を教えるとか。

世代間を超えた繋がりが生まれるような講座もあっていいのかなと思っていて。色んな世代とかバックグラウンドがあるコミュニティが理想なので、そういう多様性が生まれるような方をお呼びしたいですね。

父性と母性はそもそも異なる

——女性がやっているイメージがないプログラミングというのは、福田さん的にいかがですか?

福田:私がデザインやプログラミングを学び始めた当初は国内の女性エンジニアの数が7%と言われていました。女性が使うアプリはたくさんあるのに作っているのは結構男性の方だったりして。

私が出会う女性の方々も、アイディアはたくさんあるのに、それを実現する手段、方法、スキルを持っておらず足踏みをしている子が多いなと思っていて自分もその一人でした。

そもそも、結構女性はパソコンが苦手な方が多かったり、プログラミングに対していわゆるオタク、ギークっぽいイメージが強い方も多いなと感じているのですが、アイデアを形にできるスキルがあるって最高に格好いいことだし、もっと女性のITに対するイメージが変わればいいのにと思って活動を続けていたので、最近自分でものを作れる女性クリエイターの方や女性エンジニアの方が少しずつ増えてきているのを見て、嬉しく思っています。

——福田さんが社会全体で男女差を感じたことはありますか?

福田:私が大学生の時は、男女間での差みたいなものを感じたことは全くなくて、逆に過度にフェミニストのような発言をする人が苦手でした。

でも社会に出て、自分含め様々な女性を見てきて、やはり女性ならではのライフイベントによる仕事への影響は大きくあるな、と思っています。

「結婚」は機会として男女平等にあるものですけど、結婚した後家事をする比重は女性の方がやはりまだまだ高い。勿論男性もしてくれる家庭が増えているものの、やはりまだ奥さんを手伝っているという感覚から抜け出せてない人も多いのではと感じています。プラス出産・子育てはやはりママが主体になってきてしまうので、自分の理想とした働き方ができなくなってしまったり、まだまだ夜までバリバリ働きたいのに諦めなければいけない人も何人も見てきました。

だから早いうちから、自分はどういう人生が理想なのかを見極めて、キャリアを選択できればいいと思います。

——時間の使い方など、男女のギャップはこれからどうしたら埋まっていくと思いますか?

福田:男女のギャップ自体は全然あっていいと私は思っていて。SHEで以前登壇していただいた猪熊真理子さんからお聞きしたんですけど、父性と母性ってそもそも違うらしいんですよ。“垂直な父性”と“水平な母性”といって、男性の方は父性が強くて、何か成し遂げたいとか目標に対して山登り型で登っていく人が多いんです。

反対に女性は母性が強く、協調性だったりとか共感力だったりとか、誰かに寄り添ってサポートしてあげるという特徴が強いらしいです。

こういったように、男女の得意なことの差はあると思っていて、それをちゃんと理解してどう差を活かしつつ、うまく折り合いをつけていくかに意識を向けるのが大事だと思うんです。

お互いを責めるんじゃなくて、自分はこっちが得意だからここをやる、あなたはこっちの得意な方をやってね、みたいな風にコミュニケーションができるといいのかなと思います。

価値を作ったり喜んでもらうのが本質

——もともとWebのデザインが好きだったんですか?

福田:Webに限らずなんですけど、初めは結構ビジュアルデザインの部分への興味から入りました。小学生とか中学生の頃プリ帳が流行ったんですけど、それをめちゃめちゃデコるのが好きだったり(笑)。

あと、自分でスマホでホームページを作ったり画像交換掲示板で歌詞入れ画像を作ったりしてました。自分が作ったもので見ず知らずの人が喜んでくれてたり使ってくれてたりというのが好きだったんです。

それからしばらく、インターネットの世界から遠のいてたんですが、改めて大人になってからWebデザインなどを勉強してみて、これってあの時の感覚と一緒だなと思って。

自分が良い、素敵だと思うもので、誰かの課題を解決して喜んでもらう体験って今も昔も変わらなくて、私にはとても合ってたんですよね。

——好きなことを仕事にする場合どうしたらいいと思いますか?

福田:趣味ではなく「仕事にする」となった時に、仕事は“自分が提供したことに対して対価を得る、お金をもらう”という行為だと思うので、きちんと価値を発揮する、人に喜んでもらうことが大切だと思っています。自分が何かしたことで喜んでもらえる人の「総量」や「深さ」が最大化されるドメインを選ぶ。

まずはお金が発生しなくてもいいから、誰か周りの課題解決したい人や、自分の持っているスキルを提供したいと思う人に対して、自分ができることを精一杯やってみる。やってみると、やろうか迷っていた時とは雲泥の学びや気づきが生まれるので、そのトライアンドエラーの繰り返しで、「これだ!」という分野をブラッシュアップして仕事に繋げていくプロセスが良いのではと思います。

私も自分がふわっと興味があったことを仕事にした一人ですが、やっぱり自分の好きなこと得意なことを仕事にできている瞬間って、人生に対しての納得感がすごくて。SHEでもそういう人を増やしたいと思っているんですが、最近はSHEで人生が変わったって言ってくれる人も少しずつ増えてきて、それが今は一番嬉しいです。

——今後SHEでやっていきたい構想はありますか?

福田:SHEは今ちょうど1年くらいやってきて、SHEに集まる様々な女性のインサイトが見えてきました。これからは、自分にしかない価値で生きていく女性を増やすという軸はブラさずに、事業の在り方とかもどんどん変えていこうと思っています。

これはスタートアップのいいところで、一回出したらそのサービスは終わりではなく、何度もユーザーの声を聞いてスピーディーにブラッシュアップを重ねてサービス改善していかなければと思っています。近いうちにSHEも生まれ変わる予定をしているので楽しみにしていてください(笑)。

女子大生×何か=最強

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——最後に大学生に向けてメッセージをいただけますか?

福田:女子大生ってすごいブランドだと思うんです。女子大生と何かを掛け算したら、それだけで超引きの強いユニークな存在になれる。私も大学生の頃は、“女子大生エンジニア”とか“女子大生デザイナー”という掛け算ワードを使う事で、他の人と差別化させようと狙って言っている部分もありました・・・(笑)。

女子大生“なのに”デザインもプログラミングもできるという、ギャップになる自分のスキルを掛け合わせて発信することが大事。この「なのに」という逆説的な表現がポイントです。ギャップは大きくすればするほど魅力的なので、普通の女子大生では考えられない部分が自分にはないか?と模索して、自分だけのユニークなキャッチフレーズを見つけてもらえればと思います。

また、大学を絶対4年ぴったりで卒業しなきゃいけないと思っている人がいたら、それは違うと思います。よく就活生から「留学したいんですけど、4年で卒業しなかったら就活に響きますか?」とかいう質問をもらうんですが、四年で卒業すること自体に別に価値はないと思っています。

就活においても、これからの社会人人生においても、4年で律儀に卒業したことよりも、あなたが今までの人生にどんなことをしてきたかの方が100倍魅力的な自己紹介カードになります。

私自身大学は2年休学していますが、あの休学した2年があったからこそ今の自分がいる。やりたいことがやりきれていない人がいたら、どんどん休学して学生という肩書きがあるのを活かしていろんなリスクを取って挑戦して欲しいと思うんです。

大学生のうちに失敗しても全然就職できるし、みんなが負っている責任も今は何もないと思うから、思いついたこと全部やってみて、PDCA回しながら自分の核となるものを作っていってもらえたらと思います。


球体型コミュニティ、人との関わり方、自分が発信していることまで、全てが「設計」であり、福田さんの理想を具現化しているのではないか。

課題解決から考える福田さんは、その方法を設計するプロデューサーなのだと思う。

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