なぜ「セキュリティトークン」が注目を集めるか

2018年5月より、ツクルバとLayerXは、ブロックチェーン技術の不動産領域への活用にむけた共同研究を行っている。

不動産などの資産をブロックチェーン上で取引する試みは、従来の業界の枠組みをどのように変えていくのだろうか。

「tsukuruba Blockchain Meetup #1」では、ブロックチェーンに関するメディアやコミュニティ運営、投資活動を行うHashHub共同創業者/COOの平野淳也氏、トークンコンサルなど、ブロックチェーン領域の技術開発を行う「LayerX」代表取締役社長の福島良典氏と共に、その動向について意見を交わした。モデレーターは株式会社ツクルバCEOの村上 浩輝が務める。

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イベントの冒頭では、平野氏に「セキュリティトークン」の特徴や、代表的なメリットを解説いただいた。

2017年頃から、独自のトークン(デジタル権利証)を発行・販売し、資金調達するICO(Initial coin offering)が話題を集めたが、価値があやふやなトークンが流通してしまっている状況が生じていた。

その結果、国ごとの証券法にしたがって発行されるトークン「セキュリティトークン」に注目が集まっている。

平野:セキュリティトークンは、それ自体に有価証券としての財産価値があるとみなされたトークンを指します。証券や不動産、債権、デリバティブのほか、アート作品のようなアセット(資産)をトークンとして発行するものが、セキュリティトークンと呼ばれます。

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平野氏は、証券のように取引の仕組みがすでに確立している資産をあえてトークン化し、ブロックチェーン上で管理するメリットを挙げる。 

平野:ひとつは『流動性』でしょう。既存の証券は取引所の営業時間が決まっており、タイムゾーンも限定される。有価証券をトークン化することにより、場所・時間を限定せず投資家がアクセスできるため、流動性が高められます。

また、証券に関わる取引をブロックチェーンに記述できれば、業務の『低コスト化』も期待できる。例えば、スマートコントラクト(契約情報の照合や監査、承認、決済など、契約に必要な一連のプロセスをブロックチェーン技術で自動化する仕組み)を活用すれば、決済期間の短縮や不正防止、取引に仲介者を介さないことによるコスト削減にも寄与できます。

日本のブロックチェーン領域を技術で牽引する「Layer X」

続いて、福島氏が登壇し、自身が代表を務めるLayerXについて紹介する。同社は、2018年に「Gunosy」と「AnyPay」が設立した合弁会社で、ブロックチェーン領域におけるコンサルティングや技術開発事業を展開している。

福島氏が同社を立ち上げた背景には、日本のブロックチェーン界隈に対する危機感があったという。

福島:日本のブロックチェーン界隈では「どのコインが儲かるか」といった、投機的な話が盛り上がり、技術的な議論が深まっているとはいえません。私は、そこに危機感と可能性を感じ、LayerXを設立しました。

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LayerXが手がける事業は主に2つ。スマートコントラクト監査、トークン設計のコンサルティングだ。

福島:1つ目のスマートコントラクト監査は、ブロックチェーン領域の開発を行う企業に対し、必要なノウハウや支援を提供する事業です。ブロックチェーン領域の開発では、一度デプロイしたコードを変更できないケースも多く、優秀なエンジニアでも脆弱性の高いコードを書いてしまう可能性があります。第三者としてコードを監査することで、そこの脆弱性リスクをつぶす、顧客の資産を守るというビジネスになります

2つ目のトークン設計のコンサルティングも、同様の理由からです。トークンも発行後の変更はできないため、初期段階でいかに適切な設計を行うかが重要になります。ブロックチェーンを活用したいが具体的な技術要件や設計ノウハウがないという企業様向けに提供しています。

バズワード化するセキュリティトークンやSTOの論点

イベント後半では、村上がモデレーターとなり、平野氏と福島氏がトークセッションを行う。各々が注目しているブロックチェーンプロジェクトやセキュリティトークンの現在地について語り合った。

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村上:最近はどのようなプロジェクトに注目されていますか?

平野:コード監査やトークン設計のコンサル、ブロックチェーンの分析を行なっている企業ですね。スマートコントラクトを行うプラットフォームを持っていなくても、ビジネスモデルを確立し、キャッシュフローが回っている企業に注目しています。

村上:自社でリスクを取らずとも、事業的には成功していると。

平野:昨年まで、取引所やマイニング以外のビジネスは考えられないと言われていました。しかし、今年に入り、新しい事業ドメインが出てきている印象があります。

福島:私は、金融のエコシステムをつくるビジネス全般に注目しています。とくに「Polymath」や「Harbor」といったメジャーなSTO(セキュリティトークンを発行し資金調達を行うこと・Security token offering)プラットフォームの動向は細かくチェックしています。

村上:最近では「セキュリティトークンにしか投資しない」という人も多いようですね。

福島:「セキュリティトークン」がバズワード化している印象も受けますね(笑)。

セキュリティトークンやSTOについて理解する上で重要なのが「どのように価値を信頼するか」という点です。ビットコインの場合、マイニングする人同士が「この人はこれだけの価値を持っている」と互いに合意し、その取引の記録がブロックチェーン上に残っている。それを元に価値が担保されているわけですね。

けれど、セキュリティトークンはそれ単体で価値が証明できない。例えば、どこかの企業がトークン化した株を所有していても、配当が返ってこない限り、その価値は証明されません。仮に返ってこなかった場合に、トークンが記録されたデータを裁判所に渡し、正式な証拠として主張できるか。そうした仕組みの整備がセキュリティトークンが機能するか否かを決める重要なポイントだと思います。

村上:ビットコインのように、誰もが相互に価値を承認するパブリックブロックチェーンの仕組みを用いて、セキュリティトークンの取引を行うのは難しいのでしょうか?

平野:証券や金融商品をパブリックブロックチェーンプラットフォームで行うのは、まだまだハードルが高いと感じています。例えば、イーサリアムのようなプラットフォームは設立して数年しか経っておらず、脆弱性に課題がある。

仮にイーサリアムの価値を、その上で取引されているセキュリティトークンが上回った場合、後者の取引を妨害するような動きが起きる可能性もある。福島さんが指摘されていた「価値をいかに証明していくか」という点も含め、まだまだ過渡期にあるという印象です。

変化の激しい中、いま注目すべきビジネス領域とは

両者とも、セキュリティトークンに期待を寄せると同時に、社会的・技術的な制約も感じているようだ。それらといかに折り合いをつけていくのか、国内外でどのような実践が行われていくのか注目していきたい。

「セキュリティトークン」がバズワード化しているように、ブロックチェーン界隈では次々と新たなトレンドが生まれている。イベントの最後、村上は今後よりスケールの期待できる事業についてたずねた。

村上:平野さんが話していた通り、今までブロックチェーン領域のビジネスというと、取引所やマイニングだったところから、監査などにも需要が広がってきました。今後、より資金が集まりそうな領域があれば教えてください。

福島:僕は、基本的に金融領域以外は注目する必要ないと思います。ブロックチェーンが優れているのは、第三者に書き換えられない状態で「合意」を記録できること。正直、ブロックチェーンはデータベースとして優れているわけではないので、信用情報やアセットを扱う以外にあまり用途が広がりづらい。

まずは少ないトランザクションで大規模な取引ができる領域から変わると思っています。具体的には不動産やファンディング、もちろんSTOの周辺も含まれます。

平野:僕もほとんど金融領域を見ていますね。それ以外だと、新しいスマートコントラクトプラットフォーム、例えば処理能力に優れた「EOS」はイーサリアムを凌ぐ勢いで成長を遂げています。それ以外だとウォレット(仮想通貨を保管するウェブアプリやソフトウェア)ですね。これまで儲からない領域だと思われていましたが、最近は利益が上がっていると聞いています。

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現実の資産をトークン化するセキュリティトークン、そしてブロックチェーン領域の事業の広がり。当日語られた2つのトピックからは、ブロックチェーンがオンラインから現実世界へ浸透し、既存のエコシステムに影響を与え始めていることが伺えた。

ツクルバも不動産領域において、ブロックチェーンの活用を進め、より効率的かつ流動的なエコシステムを目指していく。

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