田村潤一郎
tsukuruba studios 空間デザイナー

1986年千葉県生まれ。設計事務所にて住宅・集合住宅などの構造設計、店舗・オフィスの内装設計に従事。建築設計と並行して、企業ブランディングに関わるVMDを担当。2017年㈱ツクルバに参画。

鈴木萌子
株式会社アカツキ COO室 室長

外資系コンサルティングファームにて、日系企業の世界展開をサポートする戦略コンサルティング事業に従事。その後、愛するエンターテインメント領域に関わるべく、映像企画会社へ。2017年にアカツキと出会い、グローバル映像事業会社Akatsuki Entertainmentの立ち上げなど、新たなエンタメ領域を開拓する新規事業を手がける。

プロセスも試行錯誤しながら、一緒に作り上げる関係性

鈴木:今回この企画をお手伝い頂くことになったのは、御社が以前プロデュースしていたイベントがきっかけでしたよね。

田村:昨年カウカモ※プロデュースで、SpotifyとコラボしてTOKYO SOUNDSCAPE(以下TSS)というイベントを開催していました。それを見て頂いた御社の方からお話を頂いて。ちょうど私がTSSの会場構成などを担当していたので、今回やらせて頂くことになりました。
※ツクルバが運営している中古リノベーション物件の流通プラットフォーム

鈴木: 目指している方向とか何か共通のものがあるんじゃないかなと思っています。田村さんは一緒にお仕事をさせて頂く機会が多いですが、他のツクルバの方とお話しさせて頂いていても違和感がないというか。

田村:空間提案させて頂くにあたり、人の感情にフックがかかる仕掛けを大事にしたいなと思っていて。普段、オフィスの設計をやらせて頂くことが多いのですが、その時考えている、来訪者や従業員にとってその場所が何を感じられる場所であるべきか、問いかけることが実は多いんです。
一連の会話の中でも、“どう感じてほしいか” といった感覚的なやりとりがしやすかったです。

あと、メディアとか見ているもの、好きなものが近いですよね。同じサークルの仲間みたいな感じかもしれない。会社の若さもありそうですよね。新しいことにチャレンジするステージで、一緒に頑張っていこうという雰囲気も同じなのかなと思います。

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鈴木:毎週の定例で、企画を一緒に作っている感じがしていました。共通認識の中で、企画の内容から空間がブラッシュアップというか、本当に伝えたいものを詰めていけましたよね。最初は鑑賞のみだったのが、体験型になりましたし。

田村:僕は空間を作ることはできるんですが、エンターテインメントを作るという観点はどうしても弱い部分があるので。生の現場感を味わいながら企画が変わっていく過程で、お互いの掛け合いで案が成長してゆく事が楽しかったですね。

鈴木:打ち合わせでは向き合って座っていましたが、他社という線引きはなくみんなでブレストしていた感じはありましたよね。インスピレーションやヒントもたくさん頂いて、企画そのものに厚みを持って考えてくださっていて。

田村:生煮えの状態から関わるのがけっこう好きなんです(笑)時間はかかるんですが、出来上がる空間も企画自体の濃度が全然違う。
「まだ企画段階なのですが、一緒に作りましょう!」という所から始まるプロジェクトは稀で、企画が固まった状態から空間設計に入っていくことが多いんです。でも、企画段階から入れることで目指すべき着地点を企画側と空間側から詰めてゆけると考えてます。
僕は企画することに関しては専門外なので、どうやって進めていけばいいかを知らない。お互いの得意分野を活かしながらここは解決していきましょうみたいなことが言える関係値って、すごく大事だなって思っています。プロセス自体でも試行錯誤しながら前進していっている感覚に、充実感がありましたね。

映画を目的ではなく手段に。その先に何ができるか

鈴木:先ほどお話し頂いたTSSと今回の企画は音楽と映画という違いはあると思うのですが、共通して企画をつくるプロセスで大切にしている事って何でしょうか。

田村: 「どのような体験をして帰ってもらえるか」です。最近はインスタ映えや、単純にコンテンツの世界観に合わせた空間を提示する事を意図して会場構成される事がけっこう多い。来訪者に映画を通して得た「体験」を持ち帰ってもらう事を軸に、空間を作る事を大切にしてきました。

鈴木:映画というと映像という印象が強いですが、今回の企画では言葉を大切にしていますよね。

田村:映画って見たら満足してしまうことが多いと思っていました。観たあとストーリーはなんとなく覚えている、いいことを言っていたんだけど、検索しないとわからない。せっかく観た作品が自分ごとにされていない、それってもったいないなと。
なので、映画の中で印象に残った「言葉」を持ち帰られるような展示会にしたいと、壁や床に映画の名言や素敵な言葉を散りばめるような形で設計しました。

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田村:映画のイベントは結構増えてきていると思うんですが、これは切り口がほかのものと全然違うと思います。謎かけに近いというか、映画単体ではなく「映画」を用いることで何ができるかという所を模索し考え尽くした企画なので、新しい映画の楽しみ方を定義できるといいなと。

ホテルと映画を融合させたクリエイティブ

鈴木:改めてではあるのですが、どのように今回の内装やロゴのコンセプトを考えられていたか教えて頂けますか?ホテルと映画というのは、それこそ新しい組み合わせなので取り入れる要素のバランスが難しかったですよね。

田村: 全体的なデザインに関しては、オーセンティックなホテルをイメージしていますが、細かい所に映画の要素を取り入れました。クラウドファンディングを行うので、参加している感覚を持ってもらえるよう、協力して頂いた方の名前が空間の中に溶け込むよう設計しました。

ロゴは全体をエンブレムの様にしており、一目見てホテルを想起できるようにしています。ただ、主体はホテルではなく、あくまでもショートフィルムなので、フィルムやフィルムロールを落とし込んで、全体的に映画のイメージを持たせたロゴにしました。

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田村:あとは、フォントの部分。ホテルだけど映画を展示にしているというちょっと不思議な感じを、文字を反転させることで表現しています。

鈴木:ロゴ内に、ユニコーンがいるのが特徴的ですよね。

田村:映画が企画の軸なので、最初はフィルムとかフィルムロールだけでもいいとデザイナーと話していました。ただそれだと既視感があるとの意見もあり、要素を追加しようと。映画ってそもそも「フィクション」が多い媒体なので、想起させるような要素として架空の動物であるユニコーンをあしらいました。フィルムロールを回している部分は、ストーリーを紡いでいるという意味合いを込めています。

細かい所なんですが、真ん中のフィルムロールの星の数も三ツ星か五つ星か社内で結構悩みました。最初6個の穴にしていたんですけど、それだと拳銃のリボルバーっぽくなってしまって。だけど、三つだとフィルムロールに見えない、ホテルは五つ星だよね、など細い調整を繰り返して完成しました。

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鈴木:最後に、どんな方に来て頂きたいですか。

田村: ショートフィルムに興味がある方はもちろん、映画の中で言葉を求めている人やちょっと行き詰まってる人に来て頂いて、映画を見て発散してほしいなと思っています。カフェに行くくらいの感覚で来てもらえるといいなと。企画やアートな空間にエンターテインメントな仕掛けをたくさん詰め込んでいるので、ぜひそれを楽しんでほしいですね。
何よりアソビル自体の取り組みがとても面白いので、横浜に来る理由になってほしいと思っています。アソビルを軸にどのように横浜が変わっていくのか、すごく楽しみにしています。

THE STORY HOTELについて

THE STORY HOTELはショートフィルムや小説のストーリーを、ゲストのアクションと組み合わせて完結する新しいストーリー体験コンテンツとして提供することで、物語の楽しみ方を「鑑賞」から「体験」へと転換させる、新しいエンターテインメント展示です。

映画の中に入り込んだかのような世界観を持つ空間で、ホテルの案内人から差出人不明の手紙を受け取り、物語体験がスタート。手紙の指示に従って謎解きなどをはじめとしたアクションを取りながら小説やショートフィルムが楽しめる体験コンテンツとなっています。

背景の異なる物語たちがゲストのアクションによって融合し、新たにゲスト主役の物語を生み出すコンテンツ。ショートフィルムの短編ストーリーと映像の美しさが心震わす物語体験をご提供します。

詳細は下記からご覧ください。
▼プレスリリース
ツクルバが企画、設計を手がけた映画を鑑賞から体験に変えるショートフィルムギャラリー 「THE STORY HOTEL」 3月15日に横浜駅直通複合型エンタメビル「アソビル」に誕生 !本日よりクラウドファンディング開始。
▼クラウドファンディング
「鑑賞」から「体験」へ。 国内初のショートフィルムギャラリー『THE STORY HOTEL』を成功させたい!