設計者であれば、「もし自宅を設計するならやってみたいこと」のアイディアをそれぞれ持っているのではないでしょうか。

私自身も日々妄想を繰り返しにやにやしております。tsukuruba studiosアーキテクトの吉村です。

ツクルバは、建築デザイン・テクノロジー・不動産の3つの領域が共生する環境です。tsukuruba studiosの設計者は自邸を「どんなこだわり」・「思い」を持ってつくるのか。その過程を見ていきたいと思います。

アーキテクトの自邸

建築のプロが、自邸を設計するとどうなるのか。著名な建築家の自邸には、それぞれこだわりや個性、その人の姿勢が設計に表れている気がします。

今回自邸を設計するのは、住宅もオフィスも設計しているtsukuruba studiosのチーフアーキテクト。

建築家といっても、それぞれ得意な分野が異なります。architectureのメンバーも、バックグラウンドは様々。住宅だけではなく、オフィスやコワーキングスペースの設計も経験しているというのは、建築業界の中でも結構珍しいタイプかと思います。

私自身、不動産・建築・デザインの間には見えない壁があるように感じています。それは対立ではなく、法律や言語、視点の違いから生まれるものと考えています。3つの分野が共生するツクルバの、チーフアーキテクトはまた違う解を持っているのではないでしょうか。

ご本人に、ツクルバで「住宅」と「オフィス」の両方の設計をしていることで、住宅を設計する視点や意識に変化が生まれたか、聞いてみました。

2つの分野を設計しているからというわけではないですが、最近は住宅設計に求められるものが変化してきているように感じますね。
変化はオフィスにもあり、仕上等にわかりやすいデザインが求められるようになってきました。
オフィス分野では、企業のアイデンティティをどう解釈してデザインに落とし込むかというわかりやすいフックがありますが、住宅においてはなかなか難しい。
自邸のリノベーションでは「居心地」「陰影」「素材感」を意識して設計しました。

中古マンションをリノベーションする際は、外的環境を変えられないため、暗い部屋が生まれてしまう。50㎡以上の住戸をどのように設計したら心地よい空間にできるかを考えたいと思い、この物件を選びました。

住宅もオフィスも心地よい空間をつくるという共通テーマや変化はあるものの、アプローチ方法が違うんですね。

さて、次は解体現場です。ツクルバという環境にいるからこそできた、「壁の穴」を一緒にのぞいていきましょう。

解体編

今回は、理想の住まい探しをサポートする不動産のプロであるカウカモエージェントも加わり、それぞれの視点で解体現場を見てきました。

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普段はあまり見ることのできない解体現場にワクワクなご様子。

見えてきたもの

写真からお気づきの方もいるかと思います。こちらの物件、スラブ下配管です。リノベーション物件ではよく見る光景ですが、容易に水回りを動かせないため、設計者にとっては悩ましいものです。

エージェントから見ると、専有部なのか、共用部なのかがポイントとなります。このマンションは規約により共用部としているため、漏水や損傷が見られた場合、管理組合に相談することで予期していなかった工事費用に関して協議することができます。

この場合、不動産的視点では、管理状況の良いマンションと判断します。(ほとんどのマンションは規約で定められていますが、稀に何の対策をしていない物件もあるそう…)

同じ事象でも見る視点によって、マイナス要素とプラス要素が見られました。やはり、2分野のプロがいることで視野が広がりますね。

図面上や内見だけでは、排気・配管経路など、全てを把握することができず、解体してからわかることも多くあります。

解体前に悩みに悩んで決めたキッチンのレイアウトも、解体後に壊せる範囲が大きくなることがわかり、再度検討できる余地が生まれました。これはラッキーなパターン。

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設計者は天井高への懸念点を理解しながら配管やダクトをどう収めていくか、デザインの工夫でどのような印象を与えることができるか、考えていきます。悩みどころではありますが、ある意味楽しい過程が始まります。

浴室やトイレは床下に排水管を引いているため、ある程度床を上げて排水勾配が取れるように計画する必要があります。

こちらの物件は梁下の天井高さが低く、スラブ~梁下で1950mm。なかなか厳しいです。浴室の床はここからさらに上がるため、天井の低さをデザインでどう工夫するか。勝負どころです。こちらの結果はまた別の機会に。

これから

解体後躯体が見えて、築約50年のコンクリートが現す素材・存在感が出てきました。躯体に仕上げの直貼りは厳しそう。どこまで下地つくるか、などなど悩みはつきません。

言い忘れておりました!! 設計のこだわりポイントは「左官」(建物の壁や床、土塀などを、こてを使って塗り仕上げること)なんだそう。次回は奥深き「左官」の世界についてお届けしてまいりたいと思います。

お楽しみに。