暑さが一雨ごとに増してきている今日この頃。そろそろ鰻が食べたくなってきました。tsukuruba studiosアーキテクトの吉村です。

さて、今回はtsukuruba studiosチーフアーキテクトによる自邸の設計レポート第2弾、左官編です。

前回の解体編の記事では、解体後の様子を不動産のプロと設計士、それぞれの視点から見てみました。同じものを見ても得られる解が異なる面白さがありましたね。

今回は、設計のこだわりポイントである「左官」をピックアップ。

「左官仕上げ」とは、職人が塗り壁材を鏝(こて)を使って仕上げる方法です。漆喰仕上、珪藻土仕上、モルタル仕上など、構成される原料により多様な表現が可能。調湿・断熱・保温など多くのメリットがあるのが特徴です。

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左官仕上げで使われる鏝

表現方法が多様な故に難しい点も多くなってしまいます。それでも左官を選んだ理由や、職人さんとのやりとりにおける工夫に関してお伺いしてきました。

左官仕上げを選んだ理由

まず内装を考える際に、「居心地のよい空間とは何か?」と考えました。旅で訪れたことのあるマテーラの洞窟住居を思い出し、土に囲まれた場所で感じた温かみや包まれる感覚を再現したいなと思ったんです。

あとは、マンションの部屋にはどうしても光が届きにくい空間ができてしまうので、そういう空間もなるべく心地よくしたいと思い、左官仕上げにしました。

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マテーラの洞窟

決まった建材を使ってきれいに仕上げることもできますが、失敗するか成功するかわからないライブ感も自分の家だからこそ挑戦できることかなと。

特にこだわった点

左官仕上げの経験があまりないので、サンプルを見ないとわからないですし、伝えたイメージがどこまで実現できるのかわかりませんでした。そのため、工程のギリギリまでサンプルを作ってもらったり、色味や骨材の粗さ、左官の当て方を調整してもらったりしましたね。

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サンプル

空間ごとにはっきりと分けるのではなく、全体で統一感を持たせながらどことなく漂う雰囲気を変えたかったので、最終的に左官の色味は同じにして、珪藻土に混ぜる砕石の粗さで変化を生み出すことにしました。

静の場である寝室は「籠る」という感覚やマテーラで体感した雰囲気に近づけるため、粒の粗さが出る「1分」に。天高も低く抑え、住宅の中で最も洞窟感を感じられるような場としました。

擦れればケガするくらい痛いですし、壁にもたれかかれないので、過ごしづらいという意見もありますが、それくらい気を使って生活するのも自分を律することができるのでいいなと。

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寝室の壁

一方で、廊下は主動線となりますし広くはないので、壁を擦る可能性を考慮して、目の細かい「5厘」に。リビングに関しては、廊下と寝室のふたつをつなぐ空間であることと、躯体現しのままとする範囲もあることを踏まえ、バランスの良い中間の粗さで仕上げることにしました。

職人さんとのやり取りで得られた答え

工事を依頼した大工さんを通じて、85歳現役バリバリの職人さんにお願いすることになりました。

大工さん曰く、70歳以上の左官職人さんは昔ながらの左官材を扱っていた経験もあるため、腕が良いとのこと。(昔ながらのものは、化学物質が入っていない100%天然原料のため極端に塗りづらいんだそう)

最初の打合せに、写真を持って行き、まずは頭の中のイメージを共有することに徹しました。そこからは職人さんの経験値を元に、何が出来るか、どうしたら出来るかなど、アドバイスをもらいながらサンプル作成と確認、再調整の繰り返しでしたね。

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職人さんの作業の様子

砂利の粒度、鏝の種類や当て方の組み合わせで色味が異なるので、3回ほどサンプルを作ってもらい、実際の壁に塗ったもので確認しました。 本当に細かいところで変わってしまうので、実際にサンプルを確認しないと判断しづらかったですね。

最後に

再び吉村です。今回はこだわりポイントである「左官仕上げ」についてお話を伺いました。

「心地よい空間をつくる」という目標に向かってそれぞれのプロと協働することで、設計者だけでは成しえない空間づくりができていく様子を見ていると、私までもワクワクしてきました。

次回は、いよいよ完成編です、お楽しみに。